【2010年 11月 01日】
「日仏マナーのずれ」5 薮内宏 (イラスト 芦野宏)

帽子
 戦前のフランスでは、男性は帽子をかぶっている方が当たり前で、中折れ帽やハンチングあるいはベレー帽をかぶった人が多かった。子供の頃の私と弟は、外出するとき、ベレー帽をかぶっていました。日本でも中折帽子をかぶっている紳士や鳥打帽をかぶっているいなせな兄ちゃんは少なくなかったのですが、今では男性はハイキングでピケ帽をかぶる程度でしょう。日本とフランスのどちらでも、戦前と違って男性で帽子をかぶる男性は激減しました。ヨーロッパ大陸でも、シルクハットはもはや見られないでしょう。

 曇りの日にも紫外線よけの帽子をかぶったり、傘をさしている日本人女性を見て外国人は驚きます。日本人はオーストラリア人と違ってメラニン細胞が多いので皮膚ガンになる心配は低いのに。戦前にはプロビタミンDが活性化するためにわざわざ日光浴をしたものです。私の友人でベルギー人は、夏休みに沖縄でそうしてきました。日本の若い人たちの骨密度が低下しているそうですが、食べ物のファストフード化だけでなく、陽に当たる時間の少ない生活をしているからでしょうか。

 フランスの冬はどんよりした日が続き、冬休みに南仏などの陽光の多いところで冬休みを過ごすと、顔色で土地の人との区別がはっきり分かるくらいです。冬は日本の方は陽が当たるので、ずっと過ごしやすい。それで、フランス人は、夏休みに避暑ではなく、安くて日当りの良い所を選ぶ人が多い。北アフリカやギリシア、スペインが選ばれるわけです。観光目的は二の次で、同じところで長期間休養します。日本の夏休みはせわしいです。

 フランスでは、防寒や日除けのために帽子をかぶっている人はいますが、レストランのシェフが店の中で例の長い帽子を除けば、男性は、室内で帽子を脱ぐのは当たり前で、葬列に会うときも、脱帽します。ちょっと気になりますが、最近の日本では、男性が室内で帽子をかぶったままでいるのをテレビで見ることがあるのはなんとなく気になります。  

 日除け用のむぎわら帽子やハイキング用のピケ帽は論外ですが、パーティでは、女性のかぶりものは髪飾りの延長とみなされます。しかし、晩餐会では、帽子をかぶりません。フランスでは、室内照明は日本ほど明るくないので、顔がよく見えないからでしょうか。演奏会や観劇でも、前の席で帽子をかぶっている人がいると困ります。

 教室では、帽子をかぶるのは先生に対して失礼に当たるので、イスラム教徒女子学生が教室内でヴェールで頭を覆うのを止めさせようとした学校側とイスラム教のしきたりを止めようとしなかった女子学生の対立がマスコミを賑わせたことがあります。キリスト教でも、女性がヴェールをかぶる宗派がありますが、教会内に限られています。

 ねじりはちまきは帽子ではありませんが、それでも、目上の人と話をするとき、職人は鉢巻を外すのを目にします。

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