【2010年 09月 28日】
「フランスの今と昔」1 中津海裕子

【自己紹介】
日本の大学で美術史学を専攻。20歳を過ぎるまで、自分がパスポートのお世話になる日が来るとは、夢にも思ってもいませんでしたが、縁あって、現在はパリのEcole du Louvre(エコール・デュ・ルーヴル)の修士課程で、美術史学・博物館学を学んでいます。
主に文化、歴史、ときどき私の趣味である食べ物についての現地リポートをさせていただきたいと思います。

【「場」の歴史に触れる日】
今年はあまり夏らしい夏を感じぬまま、秋へと突入したパリ。ヴァカンスもすっかり明けて、あらゆるイベントが目白押し。
今回はその中でも≪ Les journées européennes du patrimoine ≫をご紹介しよう。

1984年に文化省の提案で始まり、毎年9月の第3土曜・日曜に、さまざまな場所の歴史や美を国民に発見、あるいは再発見してもらう、という趣旨で行われている。この「場所」というのが、大統領官邸や各省庁から、発掘現場や公園に至るまで、実にバラエティーに富んでいて、毎回どこを見に行ったものか悩んでしまう。また、官邸などの普段入る機会のない施設ほど人気があり、かなり長時間並ぶ覚悟も必要だ。

今回は、開館前からの行列必須な官邸などは遠慮して、カルチエ・ラタンを散策してみた。まずはCollège de France(コレージュ・ド・フランス)。ランチタイムをねらって行ったため、30分も待たずに入れた。
大学でもなければ、単なるカルチャーセンターでもない、開かれた研究機関であるCollège de France。当日は講演会なども行われていたが、それに参加せずとも内部の見学は基本的に自由。記念撮影をする人々の姿がちらほら見かけられた。

College de France

その後、午後2時ジャストにパンテオンの裏、Lycée Henri IV(アンリ4世高校)に到着。午後2時から6時のみの開放のためか、すでに建物を取り囲むように長蛇の列ができていた。前後に並んでいるマダム達と話しながら待つこと1時間半、やっと中に入ることができた。
こちらの高校の見学は、15人ほどで一組の仏語ガイドツアーのみ。このガイドは、パリにある文化財協会が、啓蒙を兼ねてボランティアで行ってる。

見学に要した時間はおよそ1時間。中庭から始まり、階段を上って下りて、隣の棟に移ってまた上って下りて、さらに移動して上って下りて・・・随分と足の鍛えられるコースであった。
さすがに、高校の前身である聖ジュヌヴィエーヴ大修道院の建設当時の建物はほとんど残っていないものの、17世紀以降に随時改築・増築されてきた部分が、そのまま教室や図書館として利用され続けている。
机や椅子はまぎれもなく現在のものなのだが、ふと視線を上げると、そこにはancien régime(アンシャン・レジーム)やフランス革命の歴史がくっきりと残っている。
こういった場所で10代の終わりを過ごせる生徒達が、少し羨ましくもあった。

Lycée Henri IV 教室

 

2010年9月、パリ

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