【2012年 09月 06日】
「日仏マナーのずれ」23 薮内宏

パン 
 パンを斜め輪切りにしてかごに盛って出されることがあります。食事のときに、トーストのように一面にバターを塗ったりしません。ジャムなどを平たく切ったパンに一面に塗るのは子供のおやつのときだけです。バターを塗りたいとき、一口分づつちぎって、その都度塗ります。

 フランスで立食パーティーのときに、カナペと言って、一口か二口で食べられる大きさに切って肉パイとかカヴィアーなどを塗ったパンが前菜として出てきます。サンドイッチではありません。サンドイッチは、イギリスのサンドイッチ伯爵がゴルフをするとき、携帯用に工夫したものだそうですね。フランス式のサンドイッチは、細いフランスパンを使っているので、ホットドッグに似ています。

 バゲットで代表されるいわゆるフランスパンはぱりっとした皮もおいしく、フランス人はパンをたくさん食べますが、それでも料理の量の方がパンの量よりも多い。したがってフランスには、主食とおかずと言う概念はありません。

 ソースがおいしいとき、一口大に切ったパンをお皿に乗せて、フォークで突き刺して、ソースをからめて食べることができます。もっとも、正式な晩餐会では、このようなくだけた食べ方はできません。パーティーでは、スープの場合と同じく、お皿に残ったソースはあきらめます。しかし、三ツ星レストランでも、アットホームな雰囲気では、家庭と同じくソース、特に肉料理のソースを残さないことができます。フランス料理では、何と言ってもソース類はきわめて重要です。ソースはウースターソースのことではありません。

 中世の宴会では、大皿に姿のまま豪華に盛った料理が一度に食卓に乗せられて、ホストが切り分けたりしたそうで、肉の前の人は肉を、魚の皿の前の人は魚を食べることしか出来なくて、フルコースを頂くどころではなかったようです。もっとも、隣に座っている人が気を利かせて取ってくれたりしたそうです。

 フランスでは、鮮魚の消費は、健康によいので一時増加した後、再び減少したが、魚は、主に加工食品の形で消費されているそうです。おすしの愛好者は増えています。海藻類は、以前と同じく、食べられていません。

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