【2012年 06月 18日】
「日仏マナーのずれ」19 薮内宏

正客の席
 日本家屋では、床の間を背にした席が上席で、違い棚の前の席がそれに次ぎます。そこから離れた席になるにしたがって順位が低くなり、席順が決められていなければ、皆は遠慮して末席に近い所にむらがる傾向が見られます。フランスなど欧米式では、入り口から見て遠い所、が上席になります。上席に近い所が好まれます。
 
 食卓では、長い食卓の中央に、主催者としての主人と主婦が向かい合わせに座り、主婦の右隣が主賓男性の席、主婦の左隣が次席です。主人の右隣が主賓女性の席、左隣が次席になります。以下、主婦の右隣である主賓男性の右隣は女性第3位、同女性の右隣は男性第5位になります。来客夫婦は斜向かいに座っていることになるわけです。パーティーでは、席は紙の札で示されているか、主婦が指定してくれます。レストランでは、男女で行く場合、ウエイターが椅子をテーブルから引き離しますので、女性は先にその椅子に座ればよい。遠慮は却って迷惑です。

 席順は難しく、公式の晩餐会では主催者側の頭痛の種です。公式の席次はウィンナ条約で大筋が定められていて、国家元首がトップです。公職関係は明確で問題はないのですが、厄介なのは政党党首、主要経済団体の長、実業家、文化人をどのように配するべきか、実に難しい。宗教家は上位の席順が与えられます。もっとも、キリスト教以外の宗教家が加わればさらに大変です。また、外国人を優先的に賓客として扱う習慣があり、年令も考慮に入れる必要があります。国旗の掲げ方もそうであり、外国の国旗を自国の国旗の右側に掲げます。昔の日本では左大臣が右大臣よりも格が上であったように、左が上席でした。日本も、親王雛の置き方は欧米式になったようです。
 
 全権大使、略して大使は、国を代表する、外交官の一番上の位です。国会議員の奥様でしたか、日本大使館内で、置き忘れた物がありましたので、大使が立ち上がってそそくさと取りに行った、と言うことを聞いたことがあります。親しい間柄でしたら別におかしいことではありませんが、そうではない場合、なんとなく気にかかる行為です。

 フランスの社交会では、女性はパーティーで予想よりも低い席順の席をあてがわれると、自宅でパーティーを開いたとき、そのし返しに、相手を同じく低い席に座らせたり、極端には、相手の衣装が下品に見えるように食堂の壁紙を張り替えさせたことがあったそうです。女性の執念は恐いです。
 
 イギリスでは、ホストとホステスはテーブルの両端に座り、主賓男性1位はホステスの右側、2位は左側、主賓女性1位はホストの右側、2位は左側という具合に座るのが正式です。もっとも、フランス式の方が国際的に一般的のようです。フランス人家庭では、上司を招待したときだけ、上司をホストの席に座らせ、ホストは末席に座ることがあります。北欧では、左側が上席です。昔の日本と同じです。

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