【2011年 07月 05日】
「日仏マナーのずれ」11 薮内宏 (イラスト 芦野宏)

花と菓子
 日本では、病気見舞いとして、鉢植えの花は「寢付く」と言って忌み嫌い、つばきのように花がぽとんと落ちるものも嫌われます。フランスでは、最近では、大輪の菊は気にしない人が増えているようですが、手みやげとして、菊、特に小菊、それにカーネーションも要注意です。お盆に当たる11月2日の墓に特に使用しますので、差し上げない方が無難でしょう。特に病気見舞いの場合は絶対に駄目です。家庭では、ばらとゆりが好まれているようであり、もちろんその他のきれいな花も喜ばれます。グラジオラスには、「あなたの冷淡さは私の心に突き刺さります」という花言葉がありますので、要注意です。ただ、困ったことに、国や時代によって花言葉が異なりますので、花屋で買うとき、送る目的と相手の好みの色を言って助言を受けながら選ぶのが賢明です。

 いつかフランス大使館の文化部長に夕食に呼ばれたことがありました。部屋には球形の大きなガラス製花瓶に細い枝物が挿してありました。誰かが花束を持参していれば、そこに飾る予定だったでしょう。しかし、フランス語が堪能で、フランス系企業で働いている日本人女性たちは誰もそうしませんでした。私はマロングラセにしました。

 日本では、手みやげに花を持参するのはそれほど多くなく、菓子類が一般的でしょう。餅菓子類は硬くなりやすいので、場合によっては要注意です。フランスのケーキはブランデー類などの香りの良いリキュールを效かせた、日本のよりも甘みの強いものが多い。フランスでは、菓子専門店で、コーヒーではなく、ミネラルウオーターだけでケーキを食べる通がいます。ケーキの風味を楽しみたいからです。

 ケーキと言えば日本では苺のショートケーキを連想するでしょうが、フランスでそれを作って売っている菓子屋はないかも知れません。家庭では、果物などを乗せたタルトか、果物などを生地に混ぜて焼いたクラフテイのようなガレットがよく食べられているように思います。もちろんババロワとかシュークリームやサバランなども好まれています。

 日本では大抵のものが輸入され、作られているのに、残念なことに果物の固形ジェリーであるパートドフルイは珍しく、そして粘りけの強いキャラメルのようなヌガが見当たりません。フランスに行くことがありましたら、試食してみて下さい。きっと好きになりますよ。

 イギリスでしたら、お茶の時間に紅茶とクッキーは欠くことができないのに、それを知らなかった父はフランス式にお茶の時間を無視したところ、イギリス人職員はストを起こしかねない勢いだったことにびっくりしたと言っておりました。フランスでは、おやつは子供専用で、ケーキ類は食後のデザートが普通でしょう。

 日本では、この頃はぶどう酒を好んで飲む人が増えました。もっとも、酒の方が好きだという人も多いので、手みやげとして持参するには、やはり相手の好みを知っているに越したことはないでしょう。フランスでも、菓子やマロングラセ以外の食べ物やぶどう酒は、相手の好みを知らないとき、避けるべきです。人によってはそれを嫌味と感じることがあります。

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