【2011年 05月 06日】
「日仏マナーのずれ」8 薮内宏 (イラスト 芦野宏)

訪問
 戦前の日本では、訪問先が屋内の整頓やもてなすための細々した気配りをされないよう、来訪を事前に通知しないことがありました。核家族ではなかったので、誰かしら留守番がいたことも関係しています。今はフランスと同じく、来訪を予告する必要がありますね。

 フランスのアパートでは、管理人の部屋が1階にあって、このアパートの住人に会いに行く場合、管理人に訪問先を言うことになっています。1階は「レドショセ」と言って、住人は2階以上に居住しています。2階は「プルミエエタージュ」と言って、「第1の階層」を意味します。日本式から見て一つづつずれるわけです。入口に表札が出ていないので、他所の人の所と間違えないように注意して下さい。左右のどちらに住んでいるかにも気をつける必要があります。管理人に確かめるとき、ボデイーランゲージにものを言わせるとよいでしょう。ビジネスマンと学生以外は英語を知らない人が多く、私の会ったフランス人技術者は、日本人と話すとき、おぼつかない英語で、右を左と言っていたのを聞いてしまいました。また、外国人に日本語を教える日本語学校のオーナーは、フランス人学生が英語を話せないので、困っている、と嘆いていました。

 日本では、玄関で履物の脱ぎ捨てにならないように配慮します。欧米式では、靴のままで室内に入るので、犬の糞をうっかり踏んでいたらことです。玄関の外にある靴ふきマットで靴の裏をよく拭くことをお忘れなく。

 玄関の戸を開けてもらうと、誰から先に入るかが気になります。日本では、外、すなわち公的なところでは、妻は夫を立てるのが建前になっていて、夫は先に行動しますが、最近では、どうでしょうか。フランスでは、夫婦に限らず、男女が連れ立って来訪するとき、玄関に先に入るのは、またはエレベーターや車に先に乗るのは女性です。

 日本では、玄関にスリッパが用意してあります。外国人は、部屋履きかと勘違いして、スリッパをはいたまま畳の上を歩こうとします。事前に教える必要があります。

 日本では、お客も、座敷でのあいさつのときに座布団を外しておじぎをしますね。日本人同士でしたら、ときにはおじぎの角度で立場の違いが分かります。神社での2回の最敬礼、2拍手、願いを終えてからの最敬礼は、その最たるものでしょう。身分の高い人が通れば、一般人は道端に寄って、拍手とお辞儀をしていた、と魏志倭人伝に載っているそうですが、神社でのお辞儀と拍手はその名残でしょうか。

 日本では、おじぎをする習慣がありますので、握手するときにも、丁寧にするためにおじぎをしながら握手するのは珍しくありません。日本通の外国人は、その方式に合わせることがあります。

 フランスでも軽いあいさつのとき以外にも、会釈する場合があります。それも会釈しながら握手する特別な場合があります。国家元首かローマ法王から握手を求められたときです。もっとも、その人が法王の友人でない場合です。友人であれば、親しみを込めて普通にあいさつします。特に高位高官ではない人に対して日本式におじぎをしながら握手をすれば、そうされたフランス人はくすぐったい気持ちになるでしょう。

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