【2010年 11月 17日】
「日仏マナーのずれ」6 薮内宏 (イラスト 芦野宏)

コート
 フランスの冬は長く、カンヌ(フランス人は実際には[カヌ]、もっと正確に言えば、「カn」と発音します。ダブルN かダブルMの前の母音は鼻音にならないからです。)コートダジュールの名称で知られている地中海に面した地域を除けば、底冷えのするどんよりした日が多いので、コートは必需品です。地中海に面した南部を除くフランス本土の秋と冬は曇天が多く、街路樹のプラタナスはもちろん、多くの樹木は落葉樹ですので、木は裸になり、つばきや青木、やつでのような広い葉の常緑樹はありません。まして山茶花のように東京でも真冬に花の咲く樹は見当たりません。それで秋はシャンソンの「枯葉」と同じく、実に裏寂しい。鈴蘭やライラックの咲く5月が待ち遠しいわけです。それで、フランスでは、気を紛らわせるのに寒い時期に演奏会や演劇が多いのは当然でしょう。カーニバルも、活気を取り戻すのになくてはならない楽しい行事です。クレープとか、穴のないドーナツのようなベニエを食べる日でもあります。

 フランスに限らず、欧米では、コートを脱いでから玄関に入れば、室内に入らせてほしい、と言う合図に感じられますので、招待された場合にも、コートは玄関に入ってから脱ぎます。招待された場合ではないとき、家の人から「どうぞお脱ぎ下さい」等と言って招き入れられない限り、コートを着たままでいるべきで、招き入れられないとき、玄関であいさつや用件を済ませて帰ることになります。あいさつだけのための予告無しの来訪では、玄関での5分間の立ち話で済ませます。

 フランス式では、家の人がお客のコートをハンガーにかけ、パーティ会場ではクロークに預けます。夫は妻がコートを脱ぎ、または着るとき、その手伝いをします。

 日本では、以前、訪問するとき、玄関に入る前にコートを脱ぐのが当たり前でしたし、その方が感じがよかった。今では、その習慣は、アパートに住んでいる人を訪れる場合に、便宜上、崩れ始めているようです。

 モンマルトルなど、パリの名所を一人で散歩すると、「鳥の糞が背中に付いていますよ」と親切ごかしに言われることがあり得ます。コートはまだよいとしても、上着の場合、脱ぐ手伝いをされたら、すりだと思った方がよいです。子供に取り巻かれたら、これもすりの可能性が高い。悲しいことですが、外国から出稼ぎにきた人たちの子供は就職の可能性が少ないことに起因している場合が多いからです。置き引きにも充分に注意すべきです。日本のある小都市で、仕事の打ち合わせにきていたフランス人は、食事に連れていった日本人が鍵を車につけたまま食事を済ませても車を盗まれなかったのにびっくりしていました。



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