- 【2015年 12月 14日】
- 『お気に入りのシャンソンを聴きながらお洒落にカジュアル・フレンチ⑨』
渡 邊 み き -
『お気に入りのシャンソンを聴きながら
お洒落にカジュアル・フレンチ』 渡 邊 み き第9回:”Paroles paroles” & La cuisine française aux saveurs égyptiennes
『甘いささやき』& エジプトの香りを楽しむフレンチ「ひよこ豆と魚貝のトマトスープ」
「鶏ムネ肉のルロー 焼きナスと白ごまのペースト添え」今回は、エキゾチックな魅力を持つ歌手のダリダ(Dalida)と、フランスの国民的人気俳優
アラン・ドロン(Alain Delon) のデュエットで世界的にヒットした『甘いささやき』を
テーマに、イタリア出身の両親を持ち、エジプトで幼少期を過ごしたダリダのプロフィール
からイメージを膨らませ、異国の香りを添えた地中海風カジュアル・フレンチのメニューを
ご紹介致します。ミス・エジプトにも選ばれ、女優として歌手として人々を魅了した美しき
ダリダの姿に、世界3大美女のひとりと言われる古代エジプトのクレオパトラ女王のイメージ
を重ねることで《美容と健康》をテーマにしたメニューが出来上がりました。フランス料理
の手法を用いますが、材料にバターやクリームは一切使わず、野菜たっぷり、カロリー控えめ
のヘルシー仕立てになっております。「ひよこ豆と魚貝のトマトスープ」
日本では「エジプト豆」とも呼ばれる「ひよこ豆」。その名の通り、ふっくら可愛い形をして
います。紀元前4000年には地中海一帯で栽培されていたと言われています。長期保存のできる
貴重なタンパク源として、豆は重要な食材であったことでしょう。ひよこ豆はサラダ、スープ、
そしてカレーやシチューなどの煮込み料理に向いており、メニューの幅も広く、栗のようにホク
ホクとした食感とクセのない美味しさが特徴です。最近では、水煮やレトルトパック入りのもの
がスーパーマーケットでも簡単に手に入るようになりました。少し手間は掛かりますが、乾燥豆
を水で戻して茹でた豆は、茹で上げが最高ですので是非お試しを!さて、エジプト料理は地中海、
紅海、ナイル河の恩恵を受け、魚貝類も豊富に使われます。今回のスープには、イカ、ホタテを
入れ、香り付けには「クミン」を用いました。お好みで、エビ、タコ、白身魚など、様々なアレ
ンジが出来ます。この「クミン」というスパイスはカレーパウダーの主原料に使われますので、
私たち日本人にも馴染みのある香りです。トマトとの相性がよく、原産はエジプトになります。
イタリアでもエジプトでもトマトを使った料理が多く、今回ご紹介するスープは、イタリア系で
エジプト育ちのダリダにとっては懐かしの味に違いありません。そして何よりも、ミネラルや
食物繊維豊富な野菜の煮込みスープは、健康と美容のためにも理想的な一品です。フランス語
では、スープは飲むものではなく、食べるもの。manger de la soupe(マンジェ・ドゥ・ラ・
スープ)と表現します。これから日本も寒い季節を迎えますが、温かい具沢山の食べるスープ
で、元気に冬を乗り切りたいですね。材料【 Ingrédients 】4人分
玉ねぎ 1個 / にんじん 中1 本 / 大根 1/4 本 / キャベツ 1/4個 / トマト 1個 / ひよこ豆(水煮)
1カップ / ニンニク 1片 / ベビーホタテ 8個 / ヤリイカ 6杯 / 豆の茹で汁 (または水)
1000cc / トマトジュース 600cc / 固形スープの素 2個 / クミン 少量 / オリーブオイル少量 /
塩・こしょう 適量作り方 【Recette】
①ひよこ豆は、豆の5倍の水で8時間程度、浸しておく。
②約2倍に膨らんだ豆を、たっぷりの新しい水で約30分間、茹でる。茹であがったらザルに
あげ、水気を切っておく。豆のエキスが溶け出した茹で汁もスープに使うのでとっておく。
③みじん切りにしたニンニク、1cm角に切った玉ねぎ、にんじん、大根、キャベツを少量の
オリーブオイルで炒める。
④③に鶏肉の皮、豆の茹で汁、トマトジュース、固形スープの素を加え、具材が柔らかくなる
まで煮込む。途中で鶏肉の皮を取り出し、あくを丁寧にすくう。
⑤④に1cm角に切ったトマト、ベビーホタテ、1cm幅に輪切りしたヤリイカ、ひよこ豆を加え、
軽く煮込み、最後に塩・こしょうで味を整え、香り付けにお好みでクミンを加える。エジプトの「絶世の美女」といえば、女王クレオパトラ(紀元前69~30年)。美容と健康の
ために、ごまは食用のみならず、油を体に塗っていたともいわれていますし、古代エジプトでは
紀元前4000年に作られたピラミッドから、ごまが発見されているそうです。そこで今回は
「ババガヌーシュ」という、焼きナスと練りごまをペースト状にしたエジプト料理をもとに、
ヘルシーな鶏ムネ肉を使ったメイン料理を彩り美しい茹で野菜のサラダ仕立てにしてみました。
ルロー(rouleau)とは、筒状に巻いたもののことを指し、料理においては、例えば「春巻」のこと
はフランス語ではrouleau de printempsのように表現します。脂が少なくさっぱりしたムネ肉
には、万能の濃厚な自家製マヨネーズを添え、シソのオリーブオイル漬けソースでアクセントを
付けました。ソースの量は、お好みで。焼きナスと白ごまのペーストはクラッカーにのせ、
カナッペ (canapé) としても美味しく頂けますので、是非オードブルの一品としてもレパー
トリーにお入れください!材料【 Ingrédients 】4人分
《鶏ムネ肉のルロー》
鶏ムネ肉 600g / ナス 中2個 / トマト 中2個 / スナップえんどう 12個 / オリーブオイル 適量
《焼きナスと白胡麻のペースト》
ナス 中5個 / 練りゴマ(白)大さじ5杯 / ニンニク 1 片 / ごま油 大さじ3杯 / レモン汁
1/2個分 / ドライトマト 2枚 / 黒オリーブ 5粒 / ハーブソルト 大さじ 1杯
《マヨネーズソース》
卵黄 1個分 / フレンチマスタード 小さじ1杯 / 白ワインヴィネガー 大さじ1杯 / サラダ油
100cc / 塩・こしょう 適量
《シソのオイル漬けソース》
シソの葉 10枚 / エキストラ・バージン・オリーブオイル 50cc / 塩 小さじ1杯作り方 【Recette】
《焼きナスと白ごまのペースト》①ナスはヘタをとり、フォークで皮の上から何ヶ所か穴を開け、網にのせて直火で皮を焦が
していく。まんべんなく熱が入るように、ときどき位置を替えて焼き、熱でナスがしぼんでき
たら火からおろし、冷ましておく。
②①の焼きナスの粗熱がとれたら、焦げた皮を丁寧に取り除く。
③フードプロセッサーにごま油、ニンニク、水で戻したドライトマト(またはオイル漬けの
ドライトマト)、黒オリーブを入れ、みじん切りにしたところへ②のナスを加え、ペースト状
になるまで混ぜ合わせる。
④③に練りゴマ、レモン汁、ハーブソルトを加え、よく混ぜる。《鶏ムネ肉のルロー》
①ムネ肉の皮とスジを取り除き(皮はスープのだしに使うのでとっておく)、包丁を斜めに
寝かせるようにして、手前に引きながら出来るだけ薄く切る。熱湯の中で、しゃぶしゃぶの
要領で肉に熱を通したら、冷水につけ、冷めたら水気を切っておく。
②ナスのヘタをとり、縦方向に5mm程度に薄く切り、オリーブオイルでソテーし、冷まして
おく。
③トマトは湯むきし、1cm程の輪切りにする。スナップえんどうは、塩を少々加えた湯で
ボイルし、食感が残る程度に茹でてから冷水につけ、冷めたら水気を切り、さやをむいて中の
豆が見えるように並べておく。
④ルローを作るには、アルミ箔、その上に食品保存用フィルム(サランラップなど)を敷き、
そこへ②の焼きナスのスライス→ナスとごまのペースト→ムネ肉→ナスとごまのペーストと
重ね(大きさの目安は15cm×15cm程度)巻き寿司のように巻いていく。下に敷いておいた
アルミ箔とフィルムを外側からしっかりと巻いて包み込み、両端をねじってルロー(巻物)の
形を固定させ、冷蔵庫で冷やす。
※盛りつけは、立体的にシンメトリックに仕上げると美しくなります。遊び心から、エジプト
の砂漠のイメージを白いすりごまで、星のイメージをピンクペッパーで表現してみました。
料理はアートです。自由な発想で、盛り付けもお楽しみください!《マヨネーズソース》
①ボールに卵黄、マスタード、塩を入れ、よく混ぜ合わせる。
②サラダ油を糸をたらすように少し加えて、泡立て器で、とろみがつくまで、しっかりと混ぜ
合わせる。
※一度に加える油の量が多いと分離しやすいので、少量の油を何回かに分けて加え、乳化の様子
をみながら混ぜ込んでいくのがポイント。
③②に白ワインビネガーと塩・こしょうを加えたら、自家製マヨネーズの出来上がり!《シソのオイル漬けソース》
①シソの葉は、洗ってよく水気をとる。
②フードプロセッサーにシソの葉、オリーブオイル、塩を入れ、シソの葉が細かくなるまで
よく混ぜる。
※今回は彩りを考えて赤ジソを使っていますが、同じ手法でパセリ、バジル、ディルなどの
オイル漬けソースを作ることができます。多めに作り、小分けにして冷凍もできますので、
赤ジソは梅干を漬けるときに使う塩漬けのものを、よく水気を切って、塩は加えずにオイル
のみで作り置きしておくのもお勧めです。パスタ、オムレツ、炒めご飯などに加えると、
香りも楽しめ、味も引き締まります。ダリダ(Dalida) & アラン・ドロン(Alain Delon) のデュエット曲『甘いささやき』。もともと
はイタリアの歌ですが、フランス語では ”Paroles Paroles”というタイトルで歌われます。
フランス語で parole とは「言葉」のこと。発音は「パロール」ですが、イタリア訛りのフラ
ンス語を話すダリダは「パローレ、パローレ」と歌っています。デュエット曲と言っても、
女性が歌い、男性はメロディー無しで、ひたすら愛の言葉を語っていく《歌とセリフ》という
独特のスタイルをとります。いくら甘い言葉を並べ立てても、私は貴方にたなびかないわよ、
と冷静に歌い上げる女性と、そんな彼女を懸命に口説き落とそうとする男性のセリフによる
フランス流《大人の恋の駆け引き》。アラン・ドロンに、こんな愛の言葉をささやかれたら、
たいていの女性は天にも昇る気持ちでOui(ウィ)と受け入れることでしょう。しかし、それ
を軽く聞き流し、ウィットに富んだ言葉であしらってしまうダリダの歌声を聴くとき、男性の
甘い言葉に惑わされてはいけないと我に返り、女性が女性に拍手を送りたくなる瞬間でもあり
ます。折角ですので、アラン・ドロン流の愛のささやきと、ダリダ流の口説きを上手くかわす
術を順を追って見て参りましょう。魅惑的な美男美女によるデュエットを聴きながら、恋愛に
おける日仏文化比較、料理とともにお楽しみください!『甘いささやき』~フランス流 大人の愛の駆け引き~
♥不思議だ、今夜、僕はどうしてしまったのだろう。初めて出逢ったときのように君を見つめている。
♥またいつものセリフ。
♥なんて表現したらいいか…君は僕にとって、終わりのない恋物語なのさ。
♥もろくて美しすぎるセリフね。
♥君は僕にとって唯一の、そして普遍の真実なんだ。
♥夢の時間はもうおしまい。想い出は色褪せて忘れ去られるもの。
♥君はヴァイオリンを響かせ、バラの香りを遠くへ運ぶ風のようだね。
♥キャラメル、ボンボン、チョコレート。
♥ときどき、君のことが分からなくなるんだ。
♥結構よ。風やバラの香りを好む女性に差し上げて。
甘さに包まれた言葉は、私の口元までは届いても、決してハートには届かないわ。
♥もう一言だけ、聞いておくれ、お願いだ。
♥パローレ、パローレ…また甘い言葉を風に撒き散らすのね。
♥君に話しかけること、それは僕の運命なんだ。分かってくれ、せめて一度だけでも聞いておくれ。
♥またいつものセリフ。口先ばかり。下心のある誘惑の言葉は、偽りに聞こえるわ。
♥君は僕にっとて、禁じられた夢、唯一の苦悩であり希望でもあるのだ。
♥あなたって話し出したら止まらないのね。ちょっと静かにしていてくださらない?
♥君は、砂丘の上で星たちを踊らせる音楽のようだ。
♥キャラメル、ボンボン、チョコレート。
♥君がまだこの世に存在しないとしたら、僕は君を創り出すだろう。
♥結構よ。砂丘に輝く星を好む女性に差し上げて。
甘さに包まれた言葉は、私の口元までは届いても、決してハートには届かないわ。
♥聞いておくれ、お願いだ、君に誓うよ。もう一言、たった一言でいいから。
なんて美しいんだ!
♥パローレ、パローレ…また甘い言葉を風に撒き散らすのね。
フレンチ・レストラン&文化サロン「レスプリ・フランセ」経営。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、
フランス・グルノーブル大学に留学。フランスの生活文化に興味を持ち、音楽・料理の分野で翻訳者、
通訳コーディネターとして活動。フランス料理をダニエル・マルタン氏に師事し、2002年サロン式フレンチレストランを湘南にオープン。 2005年には南フランス・ヴァランスの3つ星レストランMAISON PIC(メゾン・ピック)にて企業研修の機会を得る。レストラン業務に加え、コンサート・音楽サロン・フランス語講座などを企画運営、湘南における「料理と音楽」の文化交流の場となることを目指す。
幼少の頃からピアノや声楽を学び、シャンソンをパトリック・ヌジェ氏に師事。現在、レストラン経営と並行してシャンソンやフレンチ・ポップスを原語で歌う活動をしている。