【2013年 03月 27日】
「日仏マナーのずれ」34 薮内宏


 日本が鎖国状態にあったとき、ペリーが日本に開港を迫ったのは、アメリカの捕鯨船のための給水が理由になっていたそうですが、この国のグリンピースはそのことを知っているでしょうか。

 日本の水は、比較すれば確かに豊富で質が良いと言えるでしょう。戦前には井戸水の質がよく、豊富でした。もっとも、湯水のように使う、と言う表現は、今では死語になったようで、現在の大都会では、夏に節水を呼びかけられるのは稀でなくなりました。

 日本では、海水を淡水に変える技術では世界の最先端を行っていると言われています。逆浸透膜を使用した装置でそれが可能で、逆浸透膜は、輸出され始めているそうです。廃水処理も、微生物を活用して、私の住んでいる清瀬市の浄水場から排出される処理済み水の中で魚が住める、と言ったほど下水処理が進んでいるようです。フランスでは、季節によって川への廃水投棄が禁止されているためにため池を作っているところがあり、メーネロワール県のヴザン町(人口1600人)では、竹(それとも笹?)と芦を利用して廃水の浄化に成功している町もあります。

 フランスの水はカルシウムが豊富なせいか、日本人にはお腹をこわす人がいるように聞いたことがあります。フランスでも、戦前には裕福な家庭で生の水道水を避けていた傾向がありましたが、今では、安心して飲まれているそうです。ただ、緑茶はおいしくいれられないようです。

 消化器の弱いフランス人は、ティザーヌと言って、カモミーユとかハッカなど、香りの良い薬草を煎じて飲みます。

 永遠の別れになるかも知れないとき、日本には水さかずきを酌み交わす習慣がありましたが、現在ではどうでしょうか。瀕死の人のくちびるを湿らせる末期の水も、フランスにはない習慣です。

 東部のアルプスや西南部のピレネー山脈、中央高原のふもとにはミネラルウォーターの産地がいくつもあり、日本でも、エヴィアン、ヴィシー、ヴィテル、ヴォルヴィックはよく知られています。ペリエは炭酸水です。食卓でミネラルウォーターを出しているのは、わが家はゆとりがあって、健康や食事に注意しているのだとそれとなく自慢している場合もあります。

 フランスの飲食店でも水道水はただですが、日本の飲食店では、頼まなくても浄水器で濾過した冷たい水を惜しげもなく提供してくれます。ときには氷が浮かんでいることがあります。フランスでは期待できないことでしょう。

 フランスには温泉があっても、入浴が目的ではありません。消化器の悪い人などが医師の指導の下で飲むのが中心です。温泉で入浴をするのが好きな人はがっかりするでしょう。
水道水にはカルシウムが豊富に含まれているので、フランスにおりましたころ、一度も歯の治療を受けたことがありませんでした。日本に帰って4~5年後から歯医者の世話になって、今では自分の歯はほとんどなくなりました。

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