【2012年 10月 09日】
「日仏マナーのずれ」25 薮内宏

乾杯
 パーティーでは、乾杯は食事開始の予告になります。立食パーティーでは、全員が立っているので、問題はないのですが、日本では珍しくないビールの泡が消えるほどの長い紋切り型のスピーチの間にコップを持ち続けるのは楽ではありません。シャンペンでしたら、暖まって、おいしさが減少します。食卓に着いている場合、スピーチの間に座っているので問題はなくていいですが、今はやりのビュッフェ・スタイルでは、ため息が出そうです。フランスでは、乾杯のとき、食卓についている男性は腰を浮き揚げますが、女性は座ったままです。
 
 日本人には遺伝子の関係でアルコールに弱い人は少なくなく、私もその一人ですが、ぶどう酒の生産国フランスにも、日本よりも少ない割合であっても、元首相マンデスフランスのように下戸で牛乳党もいます。

 フランスでは、主婦がぶどう酒をつぐことはしません。それはウェイターか主人のすることです。

 食事中、ウェイターが、アルコール類をつぎ回っているとき、ついでもらいたくない場合、コップを逆さにしたり、手を振ったりしません。手を伸ばして、指先をコップの縁の方に近づけます。この動作は断る合図になります。しかし、乾杯用にアルコール類がつがれているとき、断ってはいけません。乾杯のとき、飲むふりをすればよいのです。コップはかちんと合わせる必要がなく、多人数では、コップを持ち上げて、軽く目礼して、乾杯(A votre sante)と言います。

 日本の酒席では、ちょこを持ち上げて注いでもらいます。ビールでもそうしますが、フランス式では、ぶどう酒やミネラルウォーターをついでもらうとき、コップを手に持ったり、差し出したりしません。コップは食卓上に置いたままにします。しかし、ウェイターのいない家庭的なふんいきの場で手が届きにくいときには、グラスを持ってついでもらう方がマナーにかなうでしょう。

 欧米式では、日本の宴会と違って、ちょうしかビール瓶を片手に席をたって歩き回ることはしません。
 
 フランス人は、食欲を高めるためにアペリティフ(食前酒)を飲むのが好きです。香りの高いフルーティーなアンジュー地方(パリの西南方)の白ぶどう酒とか、ボジョレー地方の赤ぶどう酒など、アペリテイフになる軽いぶどう酒もあります。今ではシャンペン酒もアペリティフに出されるようになりましたが、甘さで食事の風味の妨げになると言って嫌う人もいます。フランス、ベルギー、イタリアなど数カ国の人達と会食したとき、日本料理の前に出された梅酒はとても喜ばれました。

 フランスでは、地方のレストランで食事をするとき、地酒ならぬその土地のぶどう酒が料理に良く合うものです。料理に使われたぶどう酒がおいしく感じられるからでしょう。日照りの年にできたぶどう酒はおいしいのですが、半年以内に飲まなければならない、と言われているボジョレヌボーと違って、熟成を待つ方が良い。フランスでは、日本と違って、軽く、口当たりのよいボジョレヌボーを待ち焦がれる人は少ない。

 日本では、下戸の人のための配慮が少ない場合が多く、オレンジジュースのように甘い飲み物をすすめられます。料理の味を損なうので、困ります。せめてミネラルウォーターを用意してほしいです。中国では、いろいろな名目で何度も乾杯しますが、フランス式では、一回か二回だけでしょう。

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