【2013年 02月 28日】
「日仏マナーのずれ」33 薮内宏

ビール
 日本で食事をするとき、お飲物はと聞かれると、ビールを注文する人が多い。アルコール度が高くないので、気軽に飮めるし、天丼や鰻重、豚カツ、カレーライスのような普通の食堂の料理の妨げにならない点が買われているのでしょう。もっとも、フランスでは、この4種の大衆的料理は見当たりません。

 ところで、おなじみのキャベツの千切り付き豚カツは、フランスのレストランでは食べられません。カツレツはフランスではコートレートと言うのでそれを注文すると、骨がほんの少し付いている焼肉が出てきます。「コートレートパネーアラミラネーズ」と言って、特別に作ってもらうことになります。ウースターソースは、まず無いかも知れません。

 料理に特に自信のあるレストランでは、ビールを注文すれば、味の分からない人と思われる可能性があり、ビールを置いていない店があっても驚くに当たりません。

 フランスでは、ビールはベルギーとドイツに近い地方で昔から飲まれていました。そこでは、クリスマスのビール「ビエールドノエル」と言って、新酒ならぬ新ビールを飲む風習がありました。現在でも、この習慣は続いているように聞いています。日本で広まったボジョレヌボーと同じですね。ビール党が増えだしたのは、ドイツやベルギーから安く入るようになり、昼食のマクドナリザシオン(ファストフード化)が進んだからでしょう。若い人を中心に、ビールを飲む人が増えているそうです。

 ベルギーでは、毎日違う銘柄のビールを飲んでも1年間で一通り飲むことができない、とベルギーの友人が自慢していたほど銘柄が多く、よく飲まれているそうです。バターの多いソースや肉料理を主に食べるのに心臓疾患が少ないのは赤ワインのポリフェノールのおかげだとされていますが、今後はおなかぽっこりを気にする時がくるかも知れません。

 フランスでウエイターに「ビール」と言うと、似ても似つかないこの名称の食前酒を出されます。「ビエール」と言わなければなりません。喫茶店で「プレッション」すなわち瓶詰めや缶ビールでない、いわゆる生ビールを注文することになりますが、それでも4-5銘柄から選ぶことになります。パリにいる友人に聞いたら、銘柄を100種類以上揃えているビアホールもあるそうです。

 ビールを注いでもらうとき、よくコップを斜めにする人がいますが、プロに言わせれば、それは実際には重要なことでは無いそうで、注ぐ方は、一度にではなく、泡が落ち着いてから更に2回注ぎ足す方法が最良だそうです。

 ビールに含まれている炭酸ガスでげっぷが出やすいのはビールのマイナス面で、げっぷをおおっぴらに口から出すのは品位の上でさしさわりがあります。いったん口の中にためて、鼻から上手に出すことになります。

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