【2013年 02月 14日】
「日仏マナーのずれ」32 薮内宏

酒、ぶどう酒
 欧米式と違って、日本の宴会では、親交を深めるために酒の徳利かビールびんを持って、隣の人だけでなく、他の席の人の杯かコップに注いで回るのはごく普通のことです。下戸の人は杯を伏せておきますが、進められたら、一応注いでもらいます。酒を注いでもらったら、お返しに相手の人の杯に酒を注ぎます。この習慣はフランスにはありません。

 レストランでぶどう酒を選ぶのは男性のすることです。ウェイターが料理の注文を受けた後、ソムリエがぶどう酒の注文を聞きにきます。最近では、日本人もぶどう酒について良く知っている人が随分多くなっています。でも、一ツ星級以上のレストランで工夫されている料理に最も良く合うのはどのぶどう酒かはその係であるソムリエの方がもっと良く知っているので、低めの金額でもかまわないから、金額を示して気軽に相談すれば、適当な値段の最適なぶどう酒を薦めてくれます。知ったかぶりで損をすることがあります。ボルドー産のぶどう酒だからブルゴーニュ産のよりも軽いだろうと思い違いできないように、リースリング系の白ワインだから辛口と早合点できません。すごく甘口のもあります。

 栓を抜いて主人のコップに少量注ぎ、主人は試飲して、これで結構、と頭で軽くうなずいてからよそってもらいます。その前に栓を先に渡すことがあります。ぶどう酒を寝かせて、良い状態で保存していたことを示すためです。

 ぶどう酒を注いでもらうとき、コップは食卓に置いたままにして、持ち上げたりしません。日本では、湯飲み茶碗でお茶を飲むとき、左手で茶碗の底を支えるときれいに見えます。抹茶茶碗では、その方が飲みやすいのは明らかです。ぶどう酒を飲むとき、もう一つの手を添えることをしません。
 
 日本酒はかんをする場合が多いが、冷やで飲むとおいしいのもありますね。
赤ぶどう酒は室温で、白ぶどう酒は少し冷やして、シャンペンは良く冷やして飲むのが一般的だということはよく知られていますが、例外があります。

 一般に肉類には赤ぶどう酒、魚には白ぶどう酒が合うと言われていますが、子羊のような脂肪の少ない肉には白ぶどう酒、こってりした鯖料理等には赤ぶどう酒が合います。

 透明なグラスがよく使われているのはぶどう酒の色を楽しむためです。脚の長いグラスは、適当に冷えているぶどう酒を手で温めないためであり、脚が比較的短く、丸みのある胴体のグラスは、逆にぶどう酒を手で温めて、香りを楽しむためのグラスです。向かって右側のグラスから飲めるように置いてあります。水のコップは左側に置いてあります。ブランデーは丸いグラスで手で温めながら香りを楽しめます。子供にはカナール(あひる)と言ってブランデーをちょっとしみ込ませた角砂糖をあげることがあります。

 酒は百薬の長と言われています。確かに友人などと楽しく談笑しながら飲むアルコール類は心を和ませ、日常の憂さを晴らせてくれる玉箒です。日本では、酔ったときの言動は、酒のうえ、で許してもらえるでしょうが、フランスなどでは、そうは行きません。路上を千鳥足で歩いて、留置場で一夜を過ごした日本人がおります。

 アルコールがまわってくると声が大きくなりやすい。レストランでは、他の客を困らせない程度に声量を抑えたいものです。

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