【2012年 12月 06日】
「日仏マナーのずれ」28 薮内宏

チーズと食後
 日本式では、後からご飯と共に漬物が出てきますが、フランス式では、いろいろなチーズを載せた平らな板が運ばれてきます。食べる人は、好きなチーズを自分で食べたいだけ切って取ります。フランス料理の最後にはチーズは欠かせないもので、チーズのない食事は片目の無い美人と同じだ、とブリヤ・サバランと言う食通の言葉は広く知られています。チーズは日本料理の漬物に相当します。チーズには白ぶどう酒が合います。臭いの強いものが好まれて、その点では、日本食の食事の終わりの漬物みたいです。

 ブリーは味と風味に癖が無いせいか、日本で特に好まれていますが、フランス人は、同じく牛乳製のカマンベールの方が好きでしょう。羊のミルク製のロクフォールなどのブルーチーズ系は、においが強いが、食べつけたら病みつきになります。山羊の乳製チーズも。フランスのチーズは菌が生きているので、イギリス式の滅菌したプロセス・チーズと違って食べ頃があります。例えば、ブルーチーズ系は、表裏とも青みの多い方がおいしい。

 ヨーロッパ評議会で、イギリスは、滅菌していないチーズを禁止すべきだ、と提案したとき、いつも分裂しているフランス側議員は一斉に反対して、提案を撤回させました。ヨーグルトや日本の味噌のことを考えると、それは当然でしょう。

 戦前、果物は丸ごとのを自分で皮を向いて食べなければなりませんでした。それに、剥く作法があって、不器用な人には大変でした。家庭ではともかく、今では、パーティーでそのまま出ないで、加工されて出てきますので、フィンガーボールは不要になりました。

 食事の終りにコーヒーがよくでます。アメリカ式よりも濃厚ですが、カフェインは逆に薄いように聞いております。ケーキ類は、甘味が強い。戦前には、ホストは強いアルコール類と煙草を勧めるのが普通でした。今では、食卓での煙草はタブーです。日本の宴会で煙草をたしなむ人は困るでしょうが、郷にいれば郷に従えです。フランスの代表的な煙草はゴロワーズで、葉巻のような香りがします。もっとも、最近はアメリカの煙草に押されているそうです。

 会話に熱中して、誰かがなかなか食べ終らないとき、パーティーに慣れているホステスは、料理を一口分ほどをお皿に残して、食べ方の遅い人に合わせて食べ終わるようにしています。

 食事の開始と同じく、食事が終わって、最初に席を立つのはホステスです。お客ではありません。ですから食事が終わって、最初に立ち上がるのはホステスです。

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