【2012年 08月 06日】
「日仏マナーのずれ」21 薮内宏

食べ始める
 食事のとき、フランス式では、手は軽く握り締めてお皿の両脇におきますが、イギリス式では、手はひざに乗せるようです。席が広ければ前腕を食卓の縁に乗せて、両手を軽く重ねたりします。しかしひじをつくのは行儀の悪いことになっているのはどこの国でも同じです。話をするとき、フランス人の手は表情豊かです。話に熱中しているときには言葉を強調するために手を動かすからです。

 日本間ですと、手はひざの上で、日本の家庭では、「頂きます」と言ってから食事をします。神仏に対するお礼であったり、料理に供された動植物に対する感謝の気持ち、あるいは料理をしてくれた主婦に対する感謝の表れであり、お客として呼ばれた場合、「頂きます」と言うと、主婦が「どうぞ」とか「召し上がって下さい」と言ったりします。手を軽く合わせたり、両手の指先に挟んで「頂きます」を言う人もおります。フランスには、そう言うあいさつはありません。もっとも、敬虔なキリスト教徒でしたら、神様に対する感謝の気持ちを表す短い祈りをします。

 日本式と違って、フランス式では、主婦が食べ始めるまで待ちます。お客からではありません。給仕は、女性客第1位から開始され、女性では主婦で終わり、次に男性客第1位から初めて、主人が最後なのが正式です。途中で誰かが多く取れば、主人の分が無くなることもあり得ます。パーティ―の場合、ウエイターが給仕しますのでその心配は無用ですが、嫌いなものもよそわれかねません。欲しくないとき、手で軽く断ればよいのです。

 アメリカ式では、給仕された人から食べ始めます。今では、人数の多い場合、フランスでもそうします。家庭に呼ばれた場合、好きでないものも、形だけでも少し取ります。全然取らないのは主婦に対して失礼です。

 パーティーでは、乾杯が食事開始の合図になります。それまではいくらお腹がすいていても待つことになります。ビュッフェ形式の立食パーティーでしたら簡単です。ホストと主賓のスピーチや乾杯が終れば、誰から食べ始めてもかまわないのですが、さっとお目当ての料理のところに駆けつけるのはちょっと恥ずかしい。料理は全員が前菜からデザートまでを一通り食べられるように用意されているはずですので、同じ物ばかりを食べるのはつまりません。誰かとおしゃべりを楽しみながらいろいろ味わうといいですね。よごれたお皿は遠慮なく替えられます。食べる順序はフルコースに準じると良いでしょう。

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