【2011年 05月 18日】
「フランスの今と昔」 4 中津海裕子

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【Toutes les chansons ont une histoire:すべての歌に歴史あり】

 フレデリク・ゼトゥン(Frédéric Zeitoun)とカンタン・ラモッタ(Quentin Lamotta)作のミュージカル劇。ごく簡単に言ってしまえば、幅広い時代のフランスの歌とそれに関わる人々を、「シャンソン狂」ことフレデリク・ゼトゥンと二羽の喋って歌える九官鳥が弄りたおす劇である。

 シャンソン狂と九官鳥達の間でテンポ良く繰り出される言葉遊び。時に華やかに、時にしっとりと、時にはデフォルメして歌い上げられる数々のシャンソン。一貫して笑いや皮肉と絡み合ってくる「歌」そのものへのオマージュ。本当に「ミュージカル劇」と呼んでいいのかよく分からない、でもそれ以外に呼びようのない、不思議な舞台だ。
 客もおとなしく観劇しているわけではない。私が見た日の客層は元気な方だったのかもしれないが、時に客席から合の手を入れ、おもしろければ腹を抱えて笑い、好きな歌が出てくれば一緒に口ずさみ、歌い手が良ければ、台詞が続いていようがお構いなしに「ブラヴォー」と叫んで盛大に拍手をする。舞台は脚本通りに進行しているはずなのに、時折、客席の人々が主導権を奪おうとしている風にすら思えてくる。
 基本的に言葉遊びが多く、一部に政治的、社会的な話題も出てくるので、そこを理解できるとより面白さが増すのだが、いたる所に挿入されているシャンソンや、懐かしいあの人やこの人の映像(あえて名前は伏せておこう)を楽しみ、あとは周囲の観客の熱気に身を任せているだけでも、あっという間に一時間半が過ぎてしまうことだろう。

 これは余談であるが、実は今回の劇場Théâtre de la Gaîté-Montparnasse(ゲテ=モンパルナス劇場)のそもそもの起こりは、1868年にオープンしたカフェ・コンセールなのだ。オーナーの交代、時代のニーズなどに合わせて変化を続けつつ、2011年の今まで残ってきた元カフェ・コンセールのひとつである。建物は修復、改装が施されているが、今でもその独特な外観は一見に値するだろう。

ミュージカル:http://www.toutesleschansonsontunehistoire.com/ (仏語)
劇場:http://www.gaite.fr/
(ゲテ=モンパルナスでの公演は2011年5月23、30日と6月20、27日の19:00から。以降の予定はミュージカルのWebサイトに随時更新されているようです)

 

2011年5月、パリ

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